多頭飼いのおうちにとって、ニャンズが仲良くしてくれるかどうかは最も気になるポイントの一つだと思います。

猫は本来、単独で行動する動物です。野生下では縄張りを持ち、食事も休息も基本的に1頭で完結します。複数の猫が同じ空間で暮らすこと自体、猫にとっては自然な状態ではない。だからこそ、多頭飼いの環境では「逃げられる場所」と「視線を切れる場所」が、猫のストレスを左右する大きな要因になってくるのだと考えられています。
Desforges, Moesta & Farnworth(2016)が行った実験は、この「ピリつき」に対してひとつのヒントを与えてくれるものでした。29頭の猫が4つの共同部屋で暮らす施設で、棚付きのスクリーン(衝立のような構造物)を導入する前後で猫たちの行動がどう変わるかを観察した研究です。
スクリーンが置かれていた期間、朝の食事後に起きる猫同士のいさかいが有意に減少したと報告されています。食事の時間は猫にとって緊張が高まりやすいタイミングで、そのタイミングでの衝突が減ったということは、空間の中に「逃げ場」や「視線を切れる場所」が生まれたことの効果だと考えられています。
興味深いのは、スクリーンを撤去した後の話です。いさかいの頻度がスクリーン導入前の水準を超えて増加した、という結果が出ています。一度得た「安心できる場所」を失ったことで、猫たちの間に以前よりも強い緊張が生まれた可能性がある。研究者たちはこれをフラストレーションによるリバウンドではないかと解釈しています。
「あるのが当たり前」になった場所を、取り上げること

爪とぎを買ってみて、しばらく使ってからやっぱり捨てた、という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。サイズが合わなかった、ボロボロになった、部屋の雰囲気に合わなくなった。理由はさまざまだと思います。ただ、猫の側から見ると、その場所はすでに「自分のもの」になっていたのかもしれません。
Desforgesらの研究が示すのは、猫にとって構造物は「あれば嬉しいもの」ではなく、一度手にすると失いたくないものに変わるということです。だから、撤去後に元の状態に戻るのではなく、元よりも悪くなる。猫はその場所に体だけでなく、安心感の一部を預けていたのだと思います。
家具を長く置き続けることの難しさのひとつは、見た目の問題です。使い込まれてボロボロになった爪とぎが部屋の真ん中にある状態は、インテリアを大切にしている方にとって気になるポイントになりやすい。「猫のためにはいいとわかっているけれど、見た目が…」という理由で、処分を選んだ経験のある方もいるのではないかと思います。
多頭飼いの猫がお互いに「逃げ込める場所」を持てているかどうか。それは日々の衝突の多さに直結している可能性があります。Cat Cellar(キャットセラー)はひとつひとつが独立した空間になっているため、同じ部屋に複数置いても猫それぞれが「自分のもの」として認識しやすい設計になっています。
そう考えると、猫のために何か一つ家具を選ぶとき、「いつか捨てることを前提にしたもの」と「ずっと置いておけるもの」では、選択の意味がだいぶ変わってくるように感じます。見た目が崩れにくいこと、素材が劣化しにくいこと、部屋の中に出しっぱなしにしていても気にならないこと。猫が長く安心して使い続けられるかどうかは、そういった条件と結びついているのだと思います。
Cat Cellarの爪とぎ部分は交換式になっています。ダンボール素材が消耗しても、パーツだけを入れ替えて本体はそのまま使い続けられる設計です。猫が「ここは自分の場所だ」と感じている空間を壊さずに、新しい状態を保てる。それは見た目の維持だけでなく、猫の安心感を途切れさせないという意味でも、考えておく価値のあることだと思っています。

部屋の中に猫の場所をひとつ作ること。そしてその場所を、なるべく長く保ち続けること。研究が示すのは、そういう地味だけれど確かな選択の積み重ねが、猫同士の関係にも影響しているということのようです。
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※参考:Desforges EJ, Moesta A & Farnworth MJ. Effect of a shelf-furnished screen on space utilisation and social behaviour of indoor group-housed cats (Felis silvestris catus). Applied Animal Behaviour Science, 178, 60-68, 2016. DOI: 10.1016/j.applanim.2016.03.006
