猫が引っかくのを、ソファから遠ざけてあきらめさせようとした経験はないでしょうか。布を貼ったり、スプレーをかけたり。それでもどこかでまた引っかかれた、というお声をよくいただきます。
猫の爪とぎは「やめさせる」ものではなく、「向かわせる」ものです。そしてどこに向かわせるかより、何に向かわせるかのほうが、実は大切かもしれないということが研究で示されています。

猫が爪とぎをするとき、爪の手入れだけをしているわけではありません。
猫の肉球の指のつけ根付近には小さな腺があり、爪とぎのたびにそこから分泌物が出て、引っかいた場所に残ります。目には見えませんが、猫にとっては「ここは自分の場所だ」という印です。視覚的な引っかき跡と合わさって、縄張りの地図をつくっている。それが猫にとっての爪とぎの正体です。
だから猫は、一度引っかいた場所にまた戻ります。そこに匂いが残っているから。ソファの角をいくらきれいにしても、猫には「以前ここに印をつけた」という記憶が残っている。これが、繰り返し同じ場所を引っかく理由のひとつとされています。

研究で分かった「猫が好む素材」
では、猫をどこへ向かわせればよいのでしょうか。
アメリカで行われた実験(Zhang & McGlone, 2020)では、実際の家庭で暮らす猫36頭を対象に、素材の異なる爪とぎを同時に置き、1週間ビデオで観察しました。用意されたのはダンボール、ロープ、カーペット、ソファ生地の4種類です。
結果にははっきりとした差が出ました。ダンボールとロープが、カーペットやソファ生地を上回りました。特にソファ生地の爪とぎはほとんど使われなかった。猫がソファを引っかくのに、ソファに似た素材の爪とぎには見向きもしない。この逆説が、猫の爪とぎの本質を示しています。
猫は「引っかいたときの抵抗感」を求めているとされています。爪がしっかりと引っかかり、古い爪の層がはがれ、肉球が押しつけられる感触。ダンボールやロープはその感触を与えやすい素材です。ふわふわしたカーペットやソファ生地では、この感触が得にくい。だから使われないのではないかと考えられています。

猫が好む素材がダンボールやロープなら、それをリビングに置けばいい。ただ、一般的な爪とぎは見た目がどうしても「爪とぎ」です。廊下の隅に追いやりたくなる気持ちはよく分かります。でも猫がよく過ごすリビングから遠ざけるほど、使われなくなる。結果としてソファへ戻っていく。
Cat Cellarは強化ダンボールを何十層も重ねてつくった猫用家具です。猫が好む素材を、インテリアに置ける形にしました。ワインセラーをモチーフにした曲線の構造は、爪とぎでもあり、隠れ家でもある。猫が自然と近づき、自然と使う場所になるよう設計しています。
ソファへの対策を考える前に、まず「猫が使いたくなるものが部屋にあるか」を確認していただけますと幸いです。
※参考:Zhang, L., & McGlone, J. J. Scratcher preferences of adult in-home cats and effects of olfactory supplements on cat scratching. Applied Animal Behaviour Science, 2020.
