広いリビングで、猫はなぜか家具の裏や本棚の隙間にこもっていることがあります。これは性格の問題ではなく、ネコ科という生き物の本能と、私たちが暮らす現代の住空間とのちょっとしたミスマッチからきているようです。

ソファでくつろいでいる時、ふと猫を探すと、家電の裏や本棚の隙間、押入れの奥に収まっている。せっかくふかふかのクッションや窓辺の特等席を用意しても、結局は段ボール箱に戻ってしまう。これは猫がわがままなのではなく、ネコ科の動物としての本能に沿った行動のようです。
ネコ科のうち、集団で狩りをするのはライオンだけで、他は基本的に単独で獲物を狙う「単独狩猟者」とされています(『ねこ検定 公式ガイドBOOK 中級・上級編』p.22-23)。狩りのスタイルは、藪や物陰に身をひそめて獲物に忍び寄り、十分に近づいてから前足で組み伏せて首筋に牙を入れる、というもの。長距離を追いかけまわす犬やオオカミとは違い、最初から最後まで身を隠したまま近づくのが基本のようです。
筋肉も白筋と呼ばれる速筋が多く、ダッシュ時の最高速は一瞬であれば時速50kmにも達する一方、長距離の持久走にはほとんど向きません(同 p.24-25)。短く動いて、長く休む。その「長く休む」時間を過ごす場所として、ネコ科の動物は壁で囲まれた狭い空間を本能的に好むようです。

家ねこになっても、この習性はあまり変わらないと言われています。同書では、住居設計のヒントとして「部屋の中央より壁際の方が猫は安心する」(p.46-49)と紹介され、低い位置に壁で囲まれた寝床を用意することがすすめられています。入り口穴150mm、幅300〜400mm、高さ300〜350mmといったキャットボックスの寸法目安まで提案されているほどです(p.48)。
一級建築士の金巻とも子さんの『ねこと暮らす家づくり』では、ねこウォークやキャットステップだけでなく、途中で猫が姿を消せる「死角」や、休憩できる「ねこ留まりBOX」という独自の概念が紹介されています(第3章)。完全に閉じ込めるわけでもなく、丸見えでもない、いわば「緩衝空間」が猫には要る、という建築士視点の整理です(第2章)。
つまり、人にとって心地よい開放的なリビングは、猫からするとやや落ち着かない空間でもあるようなのです。家電の裏や家具の隙間に入りたがるのは、「自分で見つけた緩衝空間」を猫なりに作っている姿とも言えます。

Cat Cellarは「隠れる」「休む」方向に特化した家具です。リビングが広くて落ち着かなさそうな猫、来客や物音に敏感な猫、引っ越しや家族構成の変化があった家のように「ちょっと隠れたい」気持ちが強い場面で、無理なく馴染んでくれることが多いようです。
広い部屋を全部猫仕様に作り変える必要はなく、「ここがあなたの場所だよ」と提示できる一台があるだけで、猫の居心地は変わってくるのかもしれません。
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※参考:『ねこ検定 公式ガイドBOOK 中級・上級編(新版)』今泉忠明・服部幸・高野八重子 監修, p.22-25, p.46-49 /金巻とも子『ねこと暮らす家づくり』第2章・第3章
