猫が必要とする5つの環境要素とは?知っておきたい国際的なガイドライン

猫が必要とする5つの環境要素とは?知っておきたい国際的なガイドライン

「うちの猫、一日中寝ているけれど本当に大丈夫なのだろうか」と、ふと気になった経験はないでしょうか。ぐっすり眠っているように見えても、その環境が猫にとって本当に居心地がよいのかどうかは、なかなか判断しにくいものです。

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獣医師の国際的な学術団体であるAAFP(米国猫獣医師会)とISFM(国際猫医学会)は、2013年に「猫が必要とする5つの環境要素」についてのガイドラインを発表しています。内容は安全な空間、感覚刺激、遊び、社会的選択、清潔なトイレの5項目で、それぞれが猫の健康と行動に関係するとされています。この中でもとくに強調されているのが、「隠れられる場所」と「高さのある空間」の確保です。なぜこの2点なのか、少し詳しく見てみたいと思います。

猫は自分で「安全かどうか」を確かめてから行動する動物です。物音がしたとき、知らない人が来たとき、とっさに身を隠せる場所があるかどうかが、その猫にとっての安心感に直結しています。「隠れ場所があっても使わない猫もいる」というお声もいただきますが、使わないとしても、「いざとなれば逃げ込める」という選択肢があること自体が、猫の緊張レベルに影響しているようです。隠れ場所がない環境では、猫は常に周囲を警戒し続けなければならず、それが慢性的なストレスの原因になり得ると考えられています。

もうひとつの「感覚刺激」については、爪とぎができる素材や、においを嗅いだり探索したりできる対象が環境にあることを指します。Ellis(2009)の研究では、爪とぎ、隠れる行動、探索行動を自然に表出できる環境設計が、猫の行動問題や下部尿路疾患の予防に有効であることが示されています。言い換えれば、猫がストレスを発散できる「出口」を部屋の中に作ることが、問題行動の予防にもつながるということです。爪とぎをそこでする、気になるものを嗅いでみる、高いところに上って辺りを見渡す。そういった一連の行動が、猫にとっての「自分でできること」であり、その積み重ねが満足感に関わっているのだと思います。

複数の要素がひとつにまとまっていること

Houser & Vitale(2022)のシェルター猫を対象にしたレビュー研究では、隠れ箱、垂直空間、人との交流という複数の要素を組み合わせることが、単一の要素だけを提供するよりも猫の福祉を向上させることが確認されています。ひとつだけでも効果はあるが、組み合わせることでより大きな変化が生まれる、というイメージです。この知見を家庭の猫に当てはめると、「隠れられる」「爪がとげる」「休める」という複数の機能が一か所にある道具があると、猫が自然にその場所を使いやすくなる、ということになります。

Cat Cellarは、爪とぎ素材のダンボールで作られた箱型の構造物で、穴の中に入って休んだり、上に乗ってくつろいだり、S字のくぼみで爪をとぐといった使い方ができます。「置いた翌日から穴に入って寝ていた」「爪とぎとして使いながら、隠れ家にもなっている」というお声をいただくことがあります。ガイドラインが示す「安全な空間」「感覚刺激」「探索できる環境」という3点が、ひとつのかたちにまとまっているというのが、設計の出発点にある考え方です。

部屋を大がかりにリノベーションしなくても、一つ置くだけで猫の過ごし方が変わることがあります。毎日同じ場所で眠っているように見えても、その場所が「選べる場所のひとつ」として機能しているかどうかは、猫にとって意味のある違いになり得るのだと思います。「うちの猫のために何かしてあげたい、でも何から始めればいいか分からない」とお感じの方に、ひとつの選択肢として届けば幸いです。

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※参考:Ellis SLH. Environmental enrichment: practical strategies for improving feline welfare. Journal of Feline Medicine and Surgery, 2009. DOI: 10.1016/j.jfms.2009.09.011 / Houser B & Vitale B. Increasing shelter cat welfare through enrichment: A review. Applied Animal Behaviour Science, 2022. DOI: 10.1016/j.applanim.2022.105585 / Rodan I, et al. (AAFP/ISFM). Feline Environmental Needs Guidelines. Journal of Feline Medicine and Surgery, 2013. DOI: 10.1177/1098612x13477537

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