叱るより猫の"OKゾーン"を家具で作る

叱るより猫の"OKゾーン"を家具で作る

猫がソファで爪を研ぐ。テーブルに登る。観葉植物をかじる。そのたびに「ダメ」と声を上げる毎日に、少し疲れていませんか。

一級建築士で『ねこと暮らす家づくり』の著者・金巻とも子さんは、こうした悩みに対して「叱る」とは違う角度から答えを出しています。猫の行動を「やめさせる」のではなく、家の中に「OKゾーン」と「NGゾーン」を空間設計で見える化するという考え方です。叱っても伝わりにくいことを、家具の配置や素材という構造で自然に伝える。猫の行動の原因は「環境」と「人」にあるという前提に立てば、変えるべきは猫の側ではなく家の側だということになります。

本書を読んで印象的なのは、「人間目線」と「ねこ目線」は全然違う、と繰り返し強調されている点です。人間にとって「おしゃれ」と感じる部屋が、必ずしも猫にとって心地よいとは限らない。猫は高いところが好きで、狭いところに安心を覚え、視覚と嗅覚の使い方が人間とは大きく違う生き物です。だから人間が「ここで爪を研いでほしくない」と思う場所と、猫が「ここで研ぎたい」と感じる場所は、しばしばずれます。このずれを叱るたびに埋めようとしても、猫の本能までは変わりません。代わりに、猫の習性に沿った「ここはOKだよ」と伝わる場所を、空間の中に明確に置くこと。本書の発想はここから始まります。

著者は、ねこの嫌いな場所のキーワードを「うるさい・汚い・暑い」の三つにまとめています。逆に言えば、静かで、清潔で、涼しい場所は、それだけで猫にとっての「OKゾーン候補」になりうるということです。さらに本書では、床面積を広げるよりも、垂直方向を立体的に使うほうが猫の運動量と満足度に効くと書かれています。集合住宅のように床の広さを変えられない住まいでも、家具の高さや配置で猫の世界は広げられる、というのが建築士視点の実用的な提案です。

そしてもうひとつ、本書の核心は「叱る」より「向き合う」にあります。猫の行動の原因は「環境」と「人」にあると著者は繰り返し述べていて、つまり困った行動の責任を猫に背負わせるのではなく、住まいと飼い主側が調整する余地を持っている、という考え方です。爪とぎを禁止された猫の多くは、研ぐのをやめるのではなく、別の場所を探します。ソファがダメならカーペット、カーペットがダメなら柱。NGゾーンを増やすほど、猫の居場所そのものが狭くなっていく構造です。逆にOKゾーンを家の中に一箇所明確に置くと、猫はそこに向かうようになる。叱られる回数より、選ばれる回数が増えていく。これが、本書の言う「構造で伝える」ということだと受け止めています。

Cat Cellarは、リビングの景色に馴染む湾曲フォルムでありながら、爪とぎ・隠れ家・低めの観察台を兼ね、獣医師と建築家の監修のもとで設計されています。「ソファではなくここで研いでほしい」「テーブルではなくここに登ってほしい」という気持ちを、声でなく形で伝えるための家具として、お役に立てるはずです。

「OKゾーンを家の中に作る」という発想は、猫を変えようとするより、ずっと近道なのかもしれません。Cat Cellarをリビングに迎えていただくことは、インテリアを諦めることでも、猫を我慢させることでもなく、お互いの居場所をちょうど良いところに整える、ひとつの選択肢として捉えていただけますと幸いです。

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※参考:金巻とも子『ねこと暮らす家づくり』第1章

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