猫は本来、狭い場所を好む動物です。体が通れるかどうかを瞬時に判断し、するりと入っていく。その柔軟性はしばしば「猫は液体」と表現され、SNSでも広く知られるようになりました。

それでは猫ちゃんはどんな隙間にもするりと入ってしまうのでしょうか?2024年9月に発表されたある研究を読むと、その言い方は少し正確ではないのかもしれません。
ハンガリーのエトヴォシュ・ロラーンド大学の行動学者ペーテル・ポングラーツ氏は、家庭で飼われている猫30匹を対象に、自宅の入り口にダンボール製のパネルを設置し、開口部のサイズを段階的に小さくしながら猫がどう動くかを記録しました。実験は2条件。「幅は固定で、高さだけが狭くなる穴」と「高さは固定で、幅だけが狭くなる穴」です。
結果は「猫は液体」が全面的に正しいものではないことを示唆するものでした。
高さが低くなっていくと、30匹中22匹が最も低い穴の手前で立ち止まりました。速度を落とす、座り込む、くるりと引き返す。じっと穴を見つめてから、そろりと体を傾けて入っていく子もいたそうです。ところが幅が狭くなる条件では、ほとんどの猫がためらいませんでした。どれだけ細いスリットになっても、体をひねってするりと通り抜けてしまう。ためらいを見せたのは30匹中8匹だけでした。
この非対称な反応からポングラーツ氏が導いた解釈は、猫は「自分の体の高さ」についての感覚を持っていて、その感覚を使って空間に入れるかどうかを事前に判断している、というものです。一方で幅は、体をひねることで対応できるため、立ち止まって確認する必要がない。野生での文脈で考えると腑に落ちます。低い穴に頭から入ると、万一出られなくなったとき逃げ場がない。後ろから天敵が来ても、体をひねることさえできない。だから「高さが低い穴」の前では、体が自然と慎重になる。進化の中で刷り込まれてきた、ごく静かな判断です。

図 徐々に小さくなる開口部の2つのバリエーション
「測っていた」という見方

猫が穴の前で止まるという行動を見たことがある人がいたら、そのためらいは、もしかしたら自分の体の高さを測っている動作だったのかもしれません。
「猫は液体」という表現は、もちろん、狭い隙間や容積の限られている鉢に入っていく猫を見ると言い得て妙ですが、上記の研究結果を踏まえて猫の行動を見つめてみるとまた違うものが見えてくるかもしれません。
猫の行動のひとつひとつに、長い進化の痕跡が残っている。そう思うと、一緒に暮らす時間の見え方も少し変わってくるような気がします。

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※参考:Pongrácz, P. Cats are (almost) liquid!—Cats selectively rely on body size awareness when negotiating short openings. iScience, 2024. DOI: 10.1016/j.isci.2024.110799
